木曽谷ほそぼそ通信 細田登の版画の世界

谷間の少女 詩:細田登

日本の島々に     無数にきざまれた

谷間の一つ一つに   人々の暮らし

山襞に細く深<    渓流はきざまれ

風が立ち雪が舞うまに 時代が過ぎてゆく

   多<を望まない    多くを語らない

   時代の流れにまかせた 谷間の人に幸多かれ

棚田に水が光り    時雨がひとしきり

遠く山に響く     人達の声

蝉時雨も蛍火も    留まる事は無く

家路をたどるまにさえ 時代が過ぎてゆく

   多<を望まない    多くを語らない

   時代の流れにまかせた 谷間の人に幸多かれ

岡の上で少女は    いつしか母となり

つかの間の笑い声も  いつしか遠ざかる

人達の記憶にすらも  留まることは無<

生さていた証のように 咲いた蔓珠沙華

   多<を望まない    多くを語らない

   時代の流れにまかせた 谷間の人に幸多かれ  


 

僕は、ぼんやりと人々の暮らしを眺めるのが好きだ。

そこに生きる人々の暮らしが伝わってくるからだ。

この日も栃木の名も知らない村の運動会を一日見てしまった。

夜飲む酒が一段と美味しかった。


 

12月ともなると、木曽谷はすっかり冬の中である。

時折訪れる冬の日だまりに、冷や酒を飲むのは何ともいいものだ。

自然に「方丈記」物語がだぶってくる。


お酒を飲んでいない、休みの日には、愛犬といっしょにバイクの旅に出る。

晩秋の驚くほど静かな風景の中に、ひっそりと暮らしている村人たちを見る。

厳しい冬への思いなのか、それとも、この土地に生きる気迫なのか。


この版画は、僕らの仲間「山内酒造」のお酒のラベル。


僕らのライフフィールドの「椛の湖」あたりにもこんな風景が見られる。


僕の家の近くにある山「殿富士」そこからはひっそりと静かな佇まいの野尻の町が見える。

時には、山の神に感謝し、この景色を見ながら酒を飲む。


名も知らない小さな村なのに、心を惹かれる瞬間がある。

そこには、この村に思いを寄せる帰らぬ人の魂が彷徨っているのかもしれない。